カスハラ対策の義務化|中小企業・店舗がやること5つ

公開:最終更新:カスハラ対策チェック

結論

2026年10月1日から、従業員を雇うすべての事業主に、カスハラを防ぐための措置が義務づけられました(改正労働施策総合推進法 第33条第1項)。

やることは、厚生労働省の指針が定める5つの措置です。①方針を決めて全員に伝える、②相談窓口を決める、③起きたときの対応を決めておく、④特に悪質な場合の対処を決めておく、⑤相談者のプライバシーを守り、不利益な扱いをしないと決めて伝える。小さな店なら、文書3〜4枚と、全員への説明の記録で対応できます。

何が義務になったのか

2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)が、2026年10月1日に施行されました。第33条第1項は、事業主に対し、お客様や取引先などからの言動で従業員の就業環境が害されないよう、「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」「抑止のための措置」その他の雇用管理上必要な措置を講じることを求めています。

具体的に何をすればよいかは、厚生労働省の「カスタマーハラスメント防止のための指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)が定めています。指針には、中小企業や小規模な店舗を対象外にしたり、内容を軽くしたりする特別な決まりはありません。

カスハラとは何か(指針の定義)

指針は、次の3つをすべて満たすものをカスタマーハラスメントとしています。

  1. お客様、取引先、施設の利用者など(顧客等)の言動であること
  2. 業務の性質などに照らして、社会通念上許容される範囲を超えたものであること
  3. それによって、従業員の就業環境が害されること

店頭だけでなく、電話やSNSなどでの言動も含まれます。一方で、社会通念上許容される範囲のご意見やご要望は「正当な申入れ」であり、カスハラにはあたりません。

やるべき5つの措置(10項目)

指針の「4 事業主が講ずべき措置」は5つの柱と10の項目からなります。厚生労働省のリーフレットは、これを措置①〜⑩と通し番号で示しています。

指針措置の内容小さな店での具体例
⑴ 方針の明確化と周知①カスハラに毅然と対応し、従業員を守る方針を決め、管理職を含む全員に伝える
②どんな言動がカスハラか、どう対処するかを決めて、全員に伝える
A4で1枚の基本方針と、現場での対応を書いた対応マニュアルを作り、パート・アルバイトを含めて全員に説明する
⑵ 相談体制の整備③相談窓口をあらかじめ決め、全員に伝える
④窓口の担当者が適切に対応できるようにする
店長やオーナーを相談の担当者に決め、連絡先を掲示する。担当者は相談の受け方の留意点を読んでおく
⑶ 起きた後の迅速・適切な対応⑤事実関係を迅速・正確に確認する
⑥被害者への配慮の措置をとる
⑦再発防止の措置をとる
起きたことを記録シートに残す。被害を受けた人を休ませる、担当を代える。全員に改めて方針を伝える
⑷ 悪質なカスハラの抑止⑧特に悪質な場合の対処方針を決めて全員に伝え、実行できる体制を整える警告、販売やサービスのお断り、出入りのお断り、警察への通報を、誰が判断するかまで決めておく
⑸ あわせて講ずべき措置⑨相談者のプライバシーを守る措置をとり、全員に伝える
⑩相談したことなどを理由に不利益な扱いをしないと定め、全員に伝える
基本方針や就業規則に一文を入れ、説明のときに伝える

研修は、指針のうえでは独立した義務の項目ではありません。方針や対処の内容を伝える手段の一つとして例示されています。ただし、誰がいつ説明を受けたかを残しておくと、労働局から報告を求められたときに説明しやすくなります。

「対処の内容」として指針が挙げている例

措置②の「あらかじめ定めた対処の内容」として、指針は次のような例を挙げています。対応マニュアルを作るときは、これらを自分の店の言葉に置きかえて入れておくと抜けがありません。

  • 従業員から責任者にすぐ報告し、その場の対応について指示を受ける
  • できる限り従業員を一人で対応させない。必要に応じて責任者が代わって対応する
  • やり取りを録音・録画する(個人情報保護法を守る)
  • 十分に説明しても要求が繰り返される場合は、一定の時間で退店を求めたり、電話を切ったりする
  • 暴行、傷害、脅迫など犯罪にあたり得る言動は、警察に通報する
  • 現場で対応が難しい場合は、本社・本部に共有して指示を受ける
  • 法的な手続が必要な場合は、弁護士に相談する

小さな店の進め方(5ステップ)

  1. 不足を確認する:上の10項目のうち、すでにできていることと足りないことを確認します。本サイトの無料診断でも確認できます。
  2. 文書を作る:基本方針、対応マニュアル、対応記録シートを用意します。ひな形を使う場合も、店の実情に合わせて書きかえます(ひな形を配るだけでは不十分な理由)。
  3. 担当者と連絡先を決める:相談窓口の担当者、不在のときの連絡先、悪質な場合に判断する人を決めます。1人で勤務する時間帯がある店は、その時間の対応も決めます(1人勤務のときの対応)。
  4. 全員に伝える:パート・アルバイトを含め、お客様と接するかどうかにかかわらず全員に説明します(厚生労働省Q&A 問8)。確認書に署名をもらうと記録になります。
  5. 起きたら記録し、見直す:起きたことを記録し、被害を受けた人をケアし、必要に応じて方針やマニュアルを見直します。

労働局に説明できるように残しておくもの

法令や指針に、書類の保存義務や保存期間の定めはありません。ただ、労働局から実施状況の報告を求められることはあり(第45条第1項)、そのときに「何をしたか」を示せるものがあると安心です。

  • 日付と代表者名の入った基本方針
  • カスハラの内容と対処の内容を書いた対応マニュアル
  • 相談窓口の担当者と連絡先を伝えた記録(掲示物、配布物)
  • 全員に説明した記録(日時、参加者、使った資料、確認書)
  • 起きたことの記録と、その後にとった措置の記録

措置をとらなかった場合にどうなるかは、カスハラ対策をしないとどうなる?で解説しています。

あなたの店に足りない措置を、3分で確認

15の質問に答えるだけ。登録は不要です。診断のあと、基本方針・対応マニュアルなどの無料テンプレート(Word・PDF)をダウンロードできます。

無料で診断する

参考資料(一次資料)

  1. 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)(e-Gov法令検索(令和8年10月1日施行版))
    https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132
  2. 事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(カスハラ防止指針)(厚生労働省告示第51号(令和8年2月26日告示、令和8年10月1日適用))
    https://www.mhlw.go.jp/content/001662625.pdf
  3. ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について(Q&A)(厚生労働省 雇用環境・均等局(令和8年4月24日、令和8年9月30日改訂))
    https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695619.pdf
  4. カスタマーハラスメント・求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置 リーフレット(厚生労働省)
    https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662580.pdf
  5. カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)(厚生労働省(令和8年9月))
    https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf

あわせて読みたい