従業員1人・パートだけの店もカスハラ対策の義務の対象?

公開:最終更新:カスハラ対策チェック

結論

対象です。改正労働施策総合推進法の措置義務は「事業主」に課されたもので、会社の規模や従業員の人数による例外はありません。厚生労働省の指針にも、中小企業や小規模事業者向けの軽減や特例はありません。

守る対象の「労働者」には、正社員だけでなくパート・アルバイト・契約社員も含まれます。従業員が1人の店でも、その1人を守るための方針や対処の内容を決めておく必要があります。

対象になる事業主

措置義務を定めた第33条第1項の主語は「事業主」です。株式会社か個人事業か、従業員が何人いるかで区別はしていません。厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号)にも、「中小企業」や「小規模」を対象にした特例や軽減の規定はありません。

パワハラ防止の措置義務は、中小企業に一定の猶予期間がありましたが、カスハラの措置義務は2026年10月1日から、すべての事業主に同時に適用されています。

なお、この義務は「その雇用する労働者」を守るための雇用管理上の措置です。条文の読み方としては、人を一人も雇っていない事業者には、措置の対象となる従業員がいないことになります。一方で、パート・アルバイトを1人でも雇えば対象です。家族が働いている場合に雇用関係にあたるかどうかは個別の判断になるため、迷う場合は労働局や専門家に確認してください。

守る対象の「労働者」

指針は、守る対象の労働者を正規雇用の人に限らず、パートタイム労働者、契約社員など、事業主が雇用するすべての労働者としています。派遣労働者については、派遣元と派遣先の両方が措置を講じる必要があります。

また、方針や対処の内容を伝える相手は、お客様と接する部署の人だけではありません。厚生労働省のQ&A(問8)は、社外の人と接する機会があるかどうかを問わず、全労働者に周知する必要があるとしています。厨房だけを担当するスタッフや、事務のパートにも伝えます。

「顧客等」に含まれる人

カスハラの行為者になり得る「顧客等」には、実際に商品を買った人だけでなく、次のような人も含まれます(指針2⑷)。

  • これから商品を買ったりサービスを利用したりする可能性がある人(潜在的な顧客)
  • 取引先の担当者、契約交渉の相手
  • 施設・サービスの利用者とその家族
  • 施設の近隣住民
  • 事業の内容について問い合わせをする人

また、「職場」は店の中だけではありません。取引先の事務所、打合せの飲食店、お客様の自宅など、従業員が仕事をする場所であれば職場にあたります(指針2⑵)。

小さな店でのやり方

規模による特例はありませんが、指針やQ&Aは小さな事業所でも実行できるやり方を認めています。

  • 相談窓口は店長やオーナーでよい:相談に対応する担当者をあらかじめ決めることが、窓口の例として挙げられています(指針4⑵イ)。厚生労働省Q&A(問11)は、カスハラの窓口を他のハラスメントの窓口と一体にする必要はなく、上司が相談を受けることも可能としています。外部の機関に委託することもできます。
  • 従業員1人の店舗には別の対処を:Q&A(問14)は、従業員が1人の店舗について、実態に応じた対処の内容を定めておくことが必要としています。詳しくは1人勤務のときのカスハラ対応をご覧ください。
  • 経営者が兼ねてよい:厚生労働省の企業マニュアルは、規模の小さい企業では、経営者などが対策の推進役や相談窓口を兼ねる形を想定しています。

最低限そろえるもの

従業員数人の店であれば、次の4点と、全員に説明した記録があれば、指針の10項目をひととおりカバーできます。

  1. 基本方針(毅然と対応し従業員を守ること、悪質な場合の対処、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止)
  2. 対応マニュアル(どんな言動がカスハラか、その場でどうするか、誰に連絡するか)
  3. 対応記録シート(起きたことと、その後の対応を残す)
  4. 周知確認書(誰がいつ説明を受けたか)

本サイトでは、この4点の無料テンプレート(Word・PDF)を配布しています。そのまま配るのではなく、店の実情に合わせて書きかえて使ってください(理由はこちら)。

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参考資料(一次資料)

  1. 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)(e-Gov法令検索(令和8年10月1日施行版))
    https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132
  2. 事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(カスハラ防止指針)(厚生労働省告示第51号(令和8年2月26日告示、令和8年10月1日適用))
    https://www.mhlw.go.jp/content/001662625.pdf
  3. ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について(Q&A)(厚生労働省 雇用環境・均等局(令和8年4月24日、令和8年9月30日改訂))
    https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695619.pdf
  4. カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)(厚生労働省(令和8年9月))
    https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf

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