クリニック・薬局のカスハラ対策|応招義務との関係
クリニックや薬局も、2026年10月1日から厚生労働省のカスハラ防止指針の措置が義務です。医師には応招義務がありますが、厚生労働省の通知は、迷惑行為の態様に照らして診療の基礎となる信頼関係が喪失している場合には、新たな診療を行わないことが正当化されるとしています。
ただし、緊急の対応が必要な場合などは慎重な判断が必要です。指針も、悪質な場合のサービス提供のお断りは「法令の制限内において」と定めています。院内の方針には、この点を書き分けておきます。
応招義務とカスハラ
医師法などに定める応招義務について、厚生労働省は「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」(令和元年12月25日 医政発1225第4号)で考え方を整理しています。患者の迷惑行為については、次のように述べています。
診療・療養等において生じた又は生じている迷惑行為の態様に照らし、診療の基礎となる信頼関係が喪失している場合(※)には、新たな診療を行わないことが正当化される。厚生労働省医政局長通知(医政発1225第4号)より
この通知は、緊急対応が必要な場合かどうか、診療時間内かどうかなどによって考え方を分けています。診療を断るかどうかは、通知の内容を確認し、必要に応じて弁護士や医師会などに相談して判断してください。
薬局の薬剤師にも、正当な理由がなければ調剤の求めを拒んではならないという義務があります(薬剤師法第21条)。薬局の方針でも、お断りは法令の範囲内で行う旨を書いておきます。
指針の「法令の制限内」
カスハラ防止指針は、特に悪質なカスハラへの対処の例として、警察への通報、警告文の発出、出入りの禁止などとともに、「法令の制限内において行為者に対して商品の販売、サービスの提供等をしないこと」を挙げています。医療機関や薬局のように、法令でサービスの提供を拒めない場合がある業種は、この「法令の制限内」の部分が重要になります。
また、厚生労働省Q&A(問15)は、出入り禁止の措置を必ず講じなければならないわけではなく、事案ごとに検討するものとしています。
院内で決めておくこと
- 受付・電話でのルール:長時間の電話、同じ要求の繰り返し、大声での威圧への対応と、事務長や院長に交代する基準。
- 暴力・脅迫への対応:すぐに110番すること、他の患者と職員の安全を確保すること。
- 診療を継続するかの判断者:院長など。上の通知に照らして、緊急性や代わりの医療機関の有無を確認する手順。
- 記録:日時、言動、対応した職員、目撃者、録音・録画の有無。録音・録画をする場合は、利用目的を院内掲示などで示しておきます(Q&A 問9・10)。
- 職員のケア:担当の変更、休憩、相談先。
院内掲示・方針の書き方の例
当院は、患者さまのご意見・ご要望に誠実に対応します。一方で、職員への暴言、暴力、威圧的な言動、長時間にわたる拘束、職員の無断撮影などの迷惑行為があった場合は、対応をお断りし、警察に通報することがあります。迷惑行為の態様により信頼関係が損なわれた場合は、法令の範囲内で、以後の診療をお断りすることがあります。事実確認のため、院内での会話を録音・録画することがあります。
方針全体の書き方は基本方針の例文と書き方を、ひな形を院内用に調整する方法はこちらをご覧ください。
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無料で診断する参考資料(一次資料)
- 事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(カスハラ防止指針)(厚生労働省告示第51号(令和8年2月26日告示、令和8年10月1日適用))
https://www.mhlw.go.jp/content/001662625.pdf - 応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について(医政発1225第4号)(厚生労働省医政局長通知(令和元年12月25日))
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000581246.pdf - ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について(Q&A)(厚生労働省 雇用環境・均等局(令和8年4月24日、令和8年9月30日改訂))
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695619.pdf - 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)(e-Gov法令検索(令和8年10月1日施行版))
https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132
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